金田淳子( kaneda_bl )のブログ

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2009年の「ゲーム実況」についての文章を、2019年の私が補足する

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[この記事について、2019年(現在)の私が補足します]

 

 今でも、ゲーム実況が好きな人たち(好きだったことのある人たち)の間で、「2008年」という年号と、その時代のゲーム実況のことが懐かしく語られることがある。私もまた、2008年に起きた「ゲーム実況バブル」のおかげでこのジャンルを知った一人であり、その熱気の続いている2009年に、この文章を書いた。

   ちなみにこの文章、「RPGについて」という題目で頼まれたのだが、あまりゲームに詳しくない私は、「ハマってるんで、ゲーム実況のことを書いていいですか」と言って、無理に書かせてもらった。そこまでして書いたわりに、今見ると「新しい発見のない記事」と言わざるを得ない。しかし2009年当時はゲーム実況について、著作権的に微妙だから、着目することや論評じたいをできれば避けたい(ゲーム会社に叱られたくない)という腰の引けたメディアが少なくなかった。そのような状況で、ゲーム実況の視聴がとりたてて新しいものではなく昔から存在したゲーム経験の一つであること(だから今後なくなることはないだろうということ)、またゲーム実況のうち優れたものは批評的・創造的な作品だと言えることについて、(アライユキコさんが早くから指摘しているので、私の文章は屋上屋を架す感はあるが)この時点で紙の雑誌で書いたことについてだけは、ちょっとだけ誉めてもいいのではないかと思う。

 

 さて2019年から振り返ると、2009年のゲーム実況をとりまく状況は、およそ隔世の感がある。先にも書いたが、当時はゲーム実況というのは、二次創作同人誌以上に「著作権的に真っ黒」と思われていたので、「ゲーム実況によって、実況者が金銭的な収益を得る」ことが、はかりしれない悪行のように捉えられていた。ゲーム業界に近い人は、「(推理要素などのあるゲームなどを除いて)ほとんどのゲーム会社はむしろ宣伝になるから実況について喜んでいる」ということを知っていたのだが、このような業界事情と、ゲーム実況者・視聴者の認識とのあいだに乖離があった。当時は、「利益が一致しているのだから、ゲーム実況者とゲーム会社の間をつないで実況を収益化しよう」と真面目に考えること自体、どこかタブー視されていたと思う。

 

 その後、2011年ごろからニコニコ動画がゲーム実況ジャンルのさらなる活性化に取り組みはじめ、2012年ごろから有名実況者を招いた「××時間ぶっ通し クリアするまでゲーム実況生放送」や、予選を勝ち抜いた生主による「ニコニコゲームマスター」などを行うようになる。同時期にガジェット通信もニコニコ動画で「ゲーム実況チャンネル」を始めている。これがゲーム会社にもきちんと許可を取ったうえで、ゲーム実況に対して「ギャラ」が支払われるようになった最初期の事例だと思う。

 

 2013年末にはニコニコ動画で「ユーザーチャンネル」が開設できるようになり、これにより有名実況者は、審査を経てチャンネルを開設すれば、毎月のチャンネル登録料(からの分配)という形で収益を得ることが可能になった。またいわゆるYouTuberに広告料が支払われるようになったのは2011年からだが、その後、ゲーム(実況)動画についても、ゲーム会社が許可したタイトルについてはニコニコ動画youtubeで再生数に応じて広告料が支払われるようになった。任天堂が250種のタイトルについてニコニコ動画での収益化を許可したのは2014年末である。

 

 このような商業化の流れを経て、いまのゲーム実況がある。ゲーム実況でお金を稼ぐということがタブーでもなんでもない現在、なぜ一時期まで「ゲーム実況で金を稼ぐのは悪だ」という声がニコニコであれほど強かったのか……と、ばかばかしく、残念に思う(「塩と胡椒」のコミケ参加事件が実況視聴者たちによって激しく非難されたのは2012年冬~2013年ごろで、その後もゲーム実況者が「チャンネル開設」するたびに非難コメントがつく)。私は当時から、「振り込めない詐欺」タグそのままの感想を持っていて、こんなにも面白く、創造的な動画を作ってくれている人たちに、何らかの形で金銭的なお礼をしたいと思っていたファンだ。だから、収益化による弊害(わざと炎上させて再生数を稼ぐような宣伝戦略など)を差し引いても、今の状態は素直に嬉しい。

 

 以上、過去を振り返って、主にこの10年間の「ゲーム実況を取り巻く商業的な状況の激変」について補足してみた。そんなことより、この10年間に現れた新しい実況者、また実況内容の全体的な変化について語ってほしいという声もあるかもしれない。しかしあいにく、私も完全に老人の視聴傾向になっていて、新しい動画を幅広く楽しむということができず、2009年の時点で知った実況者さんで、今も活躍してくれている人たちの動画を、今も見ているという黒カビ状態だ。よって私は「新しい実況者」「全体的な傾向」などについて論じるうえで、あまり適任ではない。そもそもニコニコを視聴する時間が、この数年でがくんと減った。私の好きなゲーム実況者さんが、ニコニコを離れることがあったら、いよいよ潮時かもしれない。

 

 とはいえ2008年のあの頃、ニコニコは、ゲーム実況は、確かに輝いていた。この記事を読んでなつかしく思ってくれた人がいたら、あの頃のことを思い出して、できればツイートしたり、ブログに書いてくれると嬉しい。あの頃は、「著作権的に真っ黒」だから「ブログでゲーム実況を紹介したら、うp主に迷惑がかかる」とか、好事家だけで密やかに見るからこそ楽しいという感覚もあったと思うが、いま中高生の人にそれを言ったら、信じてもらえるかどうかも怪しいだろう。そんな時代感覚も含めて、ぜひたくさんの人に、ゲーム実況の歴史を記録してほしいと思う。

参考にしたサイト:https://dic.nicovideo.jp/a/ゲーム実況

(以上)

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↓ 金田が1日30時間読んでいる「刃牙」シリーズについての感想記事(2019年8月現在、その23まで書いています)も読んでね!

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